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2012年3月 5日 (月)

ハイ

 ばあちゃんの下唇の傷はずいぶんよくなってきた。
今日は、ハチミツを綿棒につけて塗ってみた。
ばあちゃんは、少し顔をしかめたようだったが、しばらくすると、舌をペチャペチャと言わせ始めた。
「おばあちゃん、甘いでしょう?」
ばあちゃんが目を開けた。
看護師さんが名前を呼ぶと、しっかりと「ハイ」と返事した。
けいこたんが、「うわぁ、久し振りに声が聞けた!」と言うと、看護師さんも、「私も久し振りに聞きました!」

 ばあちゃんは、昨年秋頃から、食べる力が衰えてきて、途中でやめてしまうので、とうとう経管栄養になっていた。
しかも、年が明けたら、胃婁を考えていると言われていた。
けいこたん達は、仕方ないことかと覚悟を決めた。
それが、年が明けてみると、チューブを自分ではずすこともないので、このまま様子を見ることにしたと言われたのだ。
つまりは、ばあちゃんが自分でチューブを抜く元気もなくなってきたということか。
けいこたんは、なんとかしたいと思っていたし、なんとか出来るのではと考えてもいたが、じいちゃんのことで、ばあちゃんのことまで、気がまわらなかった。
いつも、声をかけても返事がないまま、家路に着くのはなんともむなしいことだった。
 
 ところが、ばあちゃんの唇が、長く伸びた前歯で傷がついているのを見ると、やっぱり痛々しかった。
以前、植物状態の人が、口から刺激を受けて、少しずつ覚醒していく様子を、テレビで見たことがあったけいこたんは、やはり諦めるわけにはいかないのだ。
巷では、春は目の前まで来ている。
ばあちゃんにも、春が来るといいな。

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